奇跡 7

木村蜜実  2009-08-02投稿
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達也の実家。
大きな門構え。
広い庭。
お坊ちゃまとは聞いてたけど、こんなにとは………。

こんなに大きな家を見たら、不安だった気持ちが少し和らいだ。

お手伝いさんに言われるがまま、客室へ案内される。

「あかねさん。ありがとう。よく来てくれましたね。」

私の手を握りしめて、達也のお母さんは涙を流した。

私は、役に立つのだろうか…。

「早速で申し訳ないけど、達也に逢ってもらえます?」

「…はい。」

私はまた、お手伝いさんとお母さんに案内され、達也の部屋へ行く。

「達也、入るわよ。」

ノックを3回して、ドアを開ける。

薄暗い部屋の中、
達也は返事もせず、壁をずっと見ている。

「達也…あかねさんよ…。」

お母さんがそう言うと、達也はこっちを見た。

「あかね…?」

前の面影がなく、痩せていて、ヒゲも伸びていて、髪も伸びきっている、変わり果てた達也がいた…。

「た…達也…。」

私は前に進む事が出来なかった。涙が溢れ、立ちすくんだ。

達也は私を見て、目を丸くした。

(やっぱり、混乱しちゃうかもしれない…。)

そう感じた。

すっと立ち上がり、私の方へ歩いてくる。

私の前に立って、髪をなでる。

私の知っている達也がいる。

「あかね…。」

そう呟いて、私を抱きしめる。

細くなってしまったはずの腕なのに、強く、温かい…。

「覚えているの?私の事…。」

「…ん。覚えてる…。逢いたかった…。あかね…。」

覚えていた…。

私の事を覚えていた…。

それがわかった途端、声を出して大泣きした…。

「あかねにずっと謝りたかった…。あの時お前の事を捨ててしまって…。ずっと後悔してたんだ…。離れて気付いたんだ…。俺は…あかねが1番大事だって事が…。」

達也は私の頬に手を当てて…。

「あかね…愛してる…。」


これが、奇跡なのかもしれない…。

達也が言ってた…。

奇跡…。

その時、私の背中に熱い痛みが走った。

「ごめん…あかね…愛してるから、俺と一緒に死んでくれ…。」

口から血を吐いて、達也を見た。

「達也…イヤだよ…達也…。」

奇跡を感じた瞬間だったのに…。

達也…。

私は、愛する人に刺されて、意識が遠くなっていく…。

意識がなくなる時、達也が自分の首を刺していたのが見えた。

私は、達也と死んでしまうのか…。

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