さっきよりだいぶマシな気分だった。鳩尾がまだ少し痛んだが、吐き気は収まっていた。
美香は起き上がると、辺りを見回した。さっきと同じ風景。ただ少し違うのは、太陽が真上に昇り、ジリジリと焦げ付くような熱を降らせてくること、そのせいでヤシの木の影以外は直視できないほど真っ白に照らされて光っていることだった。くすんだ青空が綺麗だ。美香たちはわずかなヤシの木の影の中にいた。手をついた場所の砂はしっとりと湿り、暑さをしのぐために泉の水で打ち水をしたのだな、とわかった。
「王子はどうしたの?」
「見張りだ。オアシスの周りをぐるぐると回らせている。何度も何度も回るように言い付けてきた。大体奴は男のくせに体力がなさすぎるんだ。魔法に弱いなら、それなりに別の部分でのフォローが必要だろう。」
ジーナは当然、という感じに顎をツンと上げた。美香は王子が少し気の毒になって苦笑する。王宮護衛騎士のジーナは、きっと規律正しい場所で厳しく訓練を受けてきたに違いない。それを他人にまで押し付けようとするのは、少々強引ではあるが。
「このくらいでいいかな。」
ジーナは鍋に砂が入らないように蓋をした上で砂を蹴って火を消すと、荷物の中から木のお椀を出して中身をよそった。
「食べろ。」
「……ありがとう。」
渡されて初めて、美香はとてもお腹が空いているのに気づいた。きゅるるると小さくお腹が鳴った。恥ずかしくて、それを誤魔化すように美香は急いで食べ始めた。ジーナは途方に暮れたような顔で、そんな美香を見るともなく見ていた。
塩味のきついスープだったが、細かく刻んだ野菜が入っていておいしかった。ぺろりと平らげた美香からお椀を引ったくると、有無を言わさずにまた黙々とジーナはスープをつぎ始めた。
「ん。」
「あ、どうも……。」
よくわからなかったが、美香はたじたじとお礼を言って受け取った。ジーナは無言だった。何を考えているのだろう。舞子のことだろうか。美香との繋がりを危ぶんで、取るべき態度に迷いを感じているのかもしれない……。
美香は同じように黙って、舞子のことを考えようとした。今後のこともいろいろと決めねばならないはずだった。耕太を救い出すことさえまだ果たしていないが、助けたその後のことも考えなければならない。そういえば……。美香はふと気になってジーナに声をかけた。