しかしそんなことに思考は回らない。怒りで頭が沸騰している。
拓也『…』
よくも竜一を殺しやがったな…
拓也『あいつはなぁ…俺が殺す予定だったのによぉ…』
壁の照明スイッチを押す。
拓也『俺の勝ちだ』
明かりがつく。明滅を繰り返し、廊下中の蛍光灯が白く光る。
怪物『ギミャァア!』
怪物は階段の方へと走る。
拓也『逃がさねぇよ』
階段の電気もつける。
次々と明るくなる周囲に殺虫剤をふきかけられたように怪物は廊下に倒れる。
怪物は人型の虫だった。深緑で、全体的に二足歩行をする人間と変わらない様に見える。
背中に虫の翅があるということは、飛ぶことも出来たってことになる。
これなら事件の現場からさっさと帰ることも可能だろう。
拓也『こいつが昨日の通り魔事件の犯人』
『昨日の』な。
最初の犯人は俺だ。
拓也『竜一よぉ…』
俺は人を殺すような奴だったんだよ。
拓也『屋上でも、殺したくて堪らなかった』
でも、我慢して我慢して我慢してなんとか耐えた。あれほど時間がたつのが遅く感じたことはない。
拓也『ホント、二人の夜は長かったな』
完