荷造りはすませて・2

椎名 美雨  2006-07-24投稿
閲覧数[284] 良い投票[0] 悪い投票[0]

浩二の大きな背中は震えていた。
ただ上手くいかなくなってしまった。それだけのこと。いつからか会話が噛み合わなくなって、笑い合えることがなくなって、触れ合うことがなくなって…お互い別々のところを見ていた。気付いたときにはもう戻れなかった。ただそれだけのこと。
どちらも悪くない。
「昨日までずっと一緒におって、同じ物食べて、同じ布団で寝て…そういうことが当たり前やったから…もう上手くいかへんってわかってるけど、明日からもう会うこともなくて、お互い知らんとこで生きてくっていう感覚が想像もつかへんくて…」
あたしはもう自分が何を言ってるのかわからなかった。溢れる感情がとめどなく言葉になる。思考や理性を越えて。
あと10分もすれば引っ越し業者が来る。荷物と彼はトラックへ、あたしはタクシーへ乗り込み、もう二度と会うこともない。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 椎名 美雨 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ