小学校のときふたり同時に別の女の子を好きになった。
その二人はいわゆる親友でいつもペアで行動していた。
二人とも可愛いくて成績もよくて
活発で運動もできてほとんどかんぺきだった。
廊下ですれ違うときなどは心臓がドキドキして涙がでそうだった。
おそらくその二人と話をするときだけはにこやかに、いやにやけてへらへらしていただろう。
自分の関心のない女子にたいしてはツッケンドンに接していたと思う。
おそらく気に入った男子とそうでない男子にたいしても同じような態度をとっていたようだ。
子供の頃はつよくて美ししいものにあこがれていた。
弱さは悪であるとおもっていた。
だから弱い者をいじめたこともあった。
どういう経路からかそのふたり女の子の好きな男子のランキングを聞かされることになった。
それぞれ一番好きな男の子は別にいて、二番目に好きなのはこの私のだという。
しかも二人とも口をそろえてだ。
私は心臓を鉛で固められたような重苦しい、ユウウツな気持ちになったのをおぼえている。
こんなに私が二人のことを好きなのに、どうして私を一番好きになってくれないのだろう。
私の何がいけないのだろう。
私は自己嫌悪に似た感情と無力感とに同時に打のめされた。
それと同時にやっぱり二番かという、私がもともともっていたあきらめの感情もわいた。
私は一種の本能で自分が愛されない体質であることを子供なりに納得していた。
私は一家の長男として立派になることのみを期待されたいわばロボットのようなものであった。
愛情表現やこころのふれあいなどはへたくそだった。
もっと立派になればその二人からも愛してもらえるかもしれない。
今はまだたいして立派ではないので好きになってはもらえないんだとかんがえていたようだ。
まあ、二人を同時にすきになさること自体が一番目にすきになってもらえない第一の理由なのかもしれない。
結局ふたりには告ることはなかった。
私はその後も愛されない体質をひきずりながら中学、高校、そのあとの人生をあるいていくしかなかった。