【お兄ちゃん】 3

椎名  2006-07-24投稿
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朝ご飯を食べ終わった頃にはもう9時近くになっていた。


「奈緒、今日何か用事ないの?」
母が奈緒に聞いた。


「ないよ」
奈緒は携帯をいじりながらそう答えた。


お兄ちゃんは何か用事あるのかな?


奈緒はそんな事ばかり考えていた。


「人尋は?」


奈緒が小さく反応した。
まるで早く兄の返事を聞きたいかのように。


「俺もなんもねぇよ」

母は、そう、と言って洗濯をするためにリビングを出て行った。




「お兄ちゃん、今日ほんとにどこにも行かないの?」

奈緒が確認するかのように聞いた。

「さっき言ったじゃん」


「そっかぁ〜」
奈緒はニコニコしながら言った。

そんな奈緒を不思議そうに見る人尋。



「お兄ちゃん」

「何だよ」

「ほんとに今日、どこにも行かない?」

兄は何度も質問してくる奈緒に冷たい目をした。



「んな訳ねぇじゃん」

人尋はさっきと逆の答えを返した。


奈緒は「え・・」と言って悲しげな顔をした。

「ほんとはどっか行くの?ほんとにほんと?」
必死になって聞いた。


「嘘だわ」

「え?」

「だから嘘だって」


奈緒は恥ずかしがりながら聞いた質問に兄が嘘をついた事に、腹立たしくなった。


「何で嘘つくの・・お兄ちゃんの馬鹿!」

いきなりの奈緒の態度に人尋は瞬きを繰り返し、
立ち上がった。


奈緒は自分の発言に兄が怒ったと思い、下を向いた。
自分の膝を見つめる。



ぶたれる・・かも。



そんな不安を抱いて、ずっと硬直していた。

手に汗をかいているのが分かる。



兄の手があがった。

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