リレー小説「楽園」:翔

 2009-08-05投稿
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第二部【楽園】

◆第四話・前編◆

大きな銃声が響き渡ったその直後、ムクは背中に熱いものが触れているのを感じました。

ムクは震える身体で、そっと自分の背中を振り返ります。

すると、男の放った銃弾がなんとムクの身体の数ミリ手前で止まり、ムクの服を僅かに焦がしながら、宙に浮いた状態になっているではありませんか。

ムクは驚いて、さらに後ろを振り返りました。

そこには、右手に拳銃を握り締めたまま、固まって動かない長い髪の男の姿がありました。

ムクは一瞬、何が起こったのか分かりませんでした。

「良かった!間に合って」

その声は、男の左手の中から聞こえて来ました。

そう、小石のスベテです。

「私が少しだけ時間を止めたの。でも、おばあさんの時計のように世界中の時を止めることは出来ない。せいぜいこの周りだけ。さぁムク、私と一緒にこの場を立ち去りましょう。あと5分もすれば、またこの男が再び動き出すわ」

ムクは小さくうなずくと、背中の銃弾をサッと払いのけ、弾は砂の上に力無くポトリと落ちました。

そして男の元に歩み寄り、握り締められた左手の指を一本ずつ緩めると、中から温かな小石のスベテが顔をのぞかせました。

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