第二部【楽園】
◆第四話・後編◆
「さぁ早く行きましょう」
スベテはムクを急かしました。
ムクは一旦その場を離れかけましたが、再び男の元に近寄りました。そして長身の男の頭をジャンプしてポンと叩くと、右手の拳銃を外し砂に埋め、スベテと共に全速力で奥の林へと走り去りました。
――どのくらい走ったでしょう。ムクが走り疲れたところで、小石のスベテがこう話し掛けました。
「ムク、目的地はもうすぐよ。さっき男に会う前に、あなたは海で願いを言葉にしたでしょ?あの思いが通じたの。竜巻があなたを目的地の近くまで運んでくれたのよ」
「目的…地って…どこ?」
「そこは、【言魂(ことだま)の丘】と言われる場所よ。無垢な心を持った者だけが、願いの叶う場所…但し、それは願い方によって薬にもなったり毒にもなったりするの。おばあさんが言ってたでしょ。【言葉】とは、そういうものなの」
「言魂の…丘…願い…時計…おばあ…さん…」
ムクは一人つぶやきました。
「さぁ、もうひと踏ん張りよ!早くおばあさんを助けなきゃね」
――やがて林を抜けたムクの目の前に、青空が開けました。
リレー小説【楽園】
第二部【終】
――第三部へ続く