リレー小説【楽園】
第三部【第一話】
澄み切った青空。
綺麗に輝く太陽。
ムクは気づきました。
風がない…と。
また時間が止まったのです。
時が動いたり止まったり動いたりしているのは道化師の持って行ってしまった「時計」のせいだと言う知識がついたムクです。
けれど、自分が襲われた理由を考えたりはしませんでした。
そして、スベテと共に【言魂の丘】を目指します。
太陽の光は調度そこを示しているのです。
けれど、食事をしていなかったムクには体力がありません。
ムクは体力がないことにも気づかず歩いていると一件だけ家がぽつりとあるではありませんか。
ムクは家のドアを空けて中に入りました。
家の中ではお菓子作りをしている親子が止まったまま仲良くしていました。
その姿を見て微笑ましく思いながらムクはキッチンにあるパンに手を出しました。
「ダメ!!!」
突然スベテがムクに怒鳴りました。
「それは泥棒よ。
悪いことなのよ。」
ムクはスベテの言葉でパンを手から離しました。
「悪…い……こと?」
ムクは自分の心へと伝えました。
とてもいたたまれない気持ちになりました。
スベテは言いました。
「お腹が空いたのね。
悪いことはしてはダメ。
勝手に家に入ることも悪いことよ。
ムク、もう少し歩くと果物のなる木々があるはずよ。
それを食べましょう。」
ムクはスベテの言うことを素直に聞きました。
そして家から出て歩きました。
落ち込んでいるムクにスベテは言いました。
「悪いことをして嫌な気持ちになっているのね。
そういう時は『ごめんなさい』と謝るのよ。」
ムクはスベテに教わった通りさっきの家の人に心から『ごめんなさい』をしました。
すると少しだけ気持ちが楽になりました。
やがてスベテの言った通り果物の木々のなる場所へ辿り着きました。
そこで果物を取って食べ始めました。
美味しい食事に綺麗な空と太陽。
そして、風。
………。
風がある!
ムクは異変に気づきました。
【続く】