家の前に着く。
「ありがとう♪」
いつものように、お礼を言う。
「あぁ…。」
僕は話しをする事だけを考えていたから、返事が曖昧になった。
「さて…。」
あかねは体ごと僕の方に向け、
「話し…あるんでしょ?」
僕の目をじっと見つめて、あかねは僕の言葉を待つ。
その真っ直ぐな瞳に前から僕は弱い…。
「あぁ…。あのさ、今日で終わりにしないか…。俺、九州行くし、もう会えないからさ…。」
言いにくい台詞…。
高まる鼓動…。
あかねの顔が見れない。
「言うと思った。」
あかねはまた、外を見る。
「それだけじゃないでしょ?」
ちらっと僕を見る。
「えっ…?」
「他にも話しあるでしょ?」
「……ないよ。」
嘘をつく。
しばらく無言…。
タバコをくわえ、深いため息を隠すように煙を吐く。
「そっか…。」
あかねの頬に涙が流れる。
「向こうへ行って、あたしは会いに行っちゃダメなのかな…。」
こっちを見ようとしない。
「ごめん…。会いにきても、無理なんだ。」
「何故?」
「何故って…それは…。」
「ダメって事なんでしょ?」
「あぁ…。」
僕は、最後まで嘘をついてしまうのか…。
「わかった。」
そう言って鼻をすする。
あかねはこっちを見た。
「ダメな理由は聞かない。達也が決めた事なら、あたしはそれでいいと思う。そのかわり、………」
あかねは僕に唇を重ねて、すぐ離れた。
「あたしの事、忘れないでね…。」
微笑んで、車から降りようとする。
僕は慌ててあかねの腕を掴む。
「あかね、ごめんな。」
春香の事が言えなかった。
言わなきゃいけない事だったのに…。
僕の手を優しく離し、あかねは何も言わず車を降りた。
最後まで嘘をついた僕。
最後まで笑顔だったあかね。
僕の恋は罪悪感を残しておわった。