奇跡 2章 4

木村蜜実  2009-08-06投稿
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引っ越しも済み、僕と春香は九州へ住む。

知らない街、知らない人、なにもかもが知らない生活。

僕が今、春香と仲良く暮らす事が、唯一生きがいになっている。

まだ、あかねの事は心に残っているけど…。

転勤先の上司は優しく、頼りがいもある。
新しい仕事にも慣れた。

春香はだんだん家に帰ってこなくなった。

何処へ行ってるのかもわからず、連絡はメールだけ。

『今日は遅くなる』

いつもこうだ。

一度二股を掛けていた僕だから、何となく春香の行動がわかる。

あかねと春香、
二人と付き合っていた時の僕に似ているからだ。

言葉を濁し、口数が減り、顔を合わせず、家に帰らず。

そんな毎日が、嫌になった。
とゆうか、去っていきそうな春香を追う事が疲れた。

生きがいがなくなりそうだった。



そんなある日、上司からお誘いで、飲みに行くことになった。

疲れもあるせいか、飲み過ぎてしまい、帰りは千鳥足だ。

「大丈夫か?井上君。」

上司は責任を感じたのか、心配そうに話しかける。

「大丈夫です。酔ってるけど、ちゃんとしてますから…。」

「ならいいけど、気をつけて帰れよ。明日は休みだから、ゆっくりしな。」

「はい、ありがとうございます。お疲れ様です。」

手を振って、曲がり角で別れる。

家に帰っても、春香はいないんだろうな…。

ふっと見上げた空。

満月が眩しく見えた。

あかねとよく見た満月。

あいつによく言ってた言葉を思い出す。

『奇跡って神様がくれるもんじゃないんだよ。奇跡は自分が作るもの。自分が頑張ればきっと奇跡が起きるんだよ。』

あの言葉は、僕自身にも言ってた言葉。

だから、ここまで頑張ってるんだ…。

…春香には言った事なかったな…。

ぼーっと考えて歩く。

後ろから光がさす。

車か…。

そう思った瞬間だった。

体が思いがけない方へ飛ぶ。

ブレーキの音。

頭を強く打つ。

…誰か救急車!…

飛び交うざわめき。

僕は引かれたのか…?



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