リレー小説「楽園」:ミッシェル

ミッシェル  2009-08-08投稿
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リレー小説【楽園】
第三部【第三話】

スベテをしっかりと握りながらムクは走りました。

やがて道化師との距離が2メートル程になった時、彼は立ち止まり、道化師を見据えます。

そしてゆっくりと口を開き

「あなたが‥何をしようとしているのか分からないけど、その時計を‥その大事なおばあちゃんの時計を返して欲しいんだ」

ムクのその言葉を道化師は黙って聞いていましたが、道化師はやがて不気味な笑みを浮かべ始めました。

「フッフフ。そいつは無理だ。こいつで‥こいつで‥ううん?」

道化師は突然、ムクの後方へと目を移しました。

(あの男は‥誰だ?)

道化師は心の中でそう呟きながら、ムクの後方にいるあの長い髪の男を呆然と見つめていました。

ムクはその時、道化師の時計を握る手が僅かに震えているのに気付きました。

何故か道化師はその場に固まり、長い髪の男から目を離しません。

(な、何なんだこの感じは‥あの男は一体何者なんだ‥普通の人間じゃないぞ…)

長い髪の男から発せられる異様なオーラを感じ取り、道化師はなかなか動けないでいました。

「小僧!! 只で済むと思うなよ!」

長い髪の男はナイフを構え、走りました。

「ムクッ! 来たわよ!」

スベテにそう言われ、振り返ると、長い髪の男が風に髪を靡かせながらすぐそこまで迫っていました。

――その時です。

固まっていた道化師がいきなり走り出し、長い髪の男に向かっていきます。

「どうやら真っ先に始末して置かなきゃならないのは貴様のようだな」

長い髪の男から只ならぬ殺気を感じた道化師は、自然とその言葉を口にしていました。

そして、男に殴りかかります。

しかし、男はその拳を身軽にかわすと、道化師の顎を蹴り上げ、道化師を吹っ飛ばしました。

「くぅ…」

その衝撃で手に握っていた時計を離し、時計は見事にムクの足元に転がりました。

「時計!」

ムクはすかさず、足元に転がる大事な時計を拾い上げ、ポケットに仕舞いました。

「お、おのれェ」

「ふざけた野郎だ。殺してやる」

長髪の男は道化師に馬乗りになり、ナイフの刃先を道化師の首に近付けました‥。

その光景を見て、思わずムクは叫びました。

「止めてェー!」


続く

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