ハーフムーン (59)

 2009-08-08投稿
閲覧数[1105] 良い投票[0] 悪い投票[0]

ミユキは更に観察を続けた。

手前の方に目をやると、派手な服装の中年の男女と、その息子と思われる3人が固まって座っている。

――抽選会場でそれぞれ1等・2等・3等と当選した3人だ。

そこへ今度は、水色のブレザーに紺の蝶ネクタイをした、背の高い男がやって来た。避暑地のホテルにいたフロントマンである。

何故かその男が、親子3人のところへ来て、ビールを注ぎながら、こう話した。

「皆様方には、本当にお手数おかけしましたねぇ…景品と称して、自家用の外車や高級指輪など、ご用意いただいて」

それを聞いた、中年女性が言った。
「いえいえ、ワタシ共はちっとも…大変だったのは、この子だけでございますわ。ゲームの途中で液晶テレビを外したものですから、『RPGがリセットになった』と、ショックを受けておりますの」

その横で体育座りしている、覇気のない息子をさほど気にする様子も無いままに、中年夫婦はフロントマンから注がれたビールを旨そうに飲んでいた。

隣りに目を移すと、『スナックメラミン』の元アルバイトが、同じく『メラミン』のマスターに向かって話しているのが見える。

その表情はまるで、どちらが雇用主か分からない風であった。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 翔 」さんの小説

もっと見る

ミステリの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ