リレー小説「楽園」:翔

 2009-08-09投稿
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リレー小説【楽園】
第三部【第四話】

ムクがそう叫んだ瞬間、再び時は止まりました。

しかし今度は、小石のスベテの力で止まったのではありません。

本来の持ち主の元へと戻った、時計の力でした。

すでに風も止んでいます。

長い髪の男はナイフを振り上げた状態で固まっており、同様に道化師も固まって…

いえ…道化師は固まってはいません。

馬乗りになった男を乱暴に撥ねのけると、道化師は立ち上がりました。

もはや時計を支配出来ないはずの道化師が…何故?

ムクは不思議でした。

その疑問を察したかのように、スベテは答えました。

「ねぇムク、どうして道化師は固まらないと思う?それは彼が元々、無垢な心の持ち主だったからなのよ。しかも以前この言魂の丘にも来たことがあった。でも…彼はそこで願い方を誤り、道化師にされてしまったの。彼は世を恨んだ。そして世界に【復讐】を誓った。ところでムク…あなたはこの丘で、ひとつだけ願いを叶えることが出来るわ。もうすでに時計は戻ったから、願わなくても時は戻せる。さぁムク…他に何を願うの?」

――何を…願う…?

ムクは迷いながら、白塗りの奥の悲しげな道化師の表情を見つめていました。



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