リレー小説【楽園】
第三部【第四話】
ムクがそう叫んだ瞬間、再び時は止まりました。
しかし今度は、小石のスベテの力で止まったのではありません。
本来の持ち主の元へと戻った、時計の力でした。
すでに風も止んでいます。
長い髪の男はナイフを振り上げた状態で固まっており、同様に道化師も固まって…
いえ…道化師は固まってはいません。
馬乗りになった男を乱暴に撥ねのけると、道化師は立ち上がりました。
もはや時計を支配出来ないはずの道化師が…何故?
ムクは不思議でした。
その疑問を察したかのように、スベテは答えました。
「ねぇムク、どうして道化師は固まらないと思う?それは彼が元々、無垢な心の持ち主だったからなのよ。しかも以前この言魂の丘にも来たことがあった。でも…彼はそこで願い方を誤り、道化師にされてしまったの。彼は世を恨んだ。そして世界に【復讐】を誓った。ところでムク…あなたはこの丘で、ひとつだけ願いを叶えることが出来るわ。もうすでに時計は戻ったから、願わなくても時は戻せる。さぁムク…他に何を願うの?」
――何を…願う…?
ムクは迷いながら、白塗りの奥の悲しげな道化師の表情を見つめていました。