「何故ここにいる‥」
長髪の男はそう言って、ウォーレンに詰め寄った。
その男の背後に並ぶ者達は、皆微動だにせず、ただ立ち尽くしたままウォーレンを見つめている。
男達の鋭い視線を感じながら、ウォーレンは答えた。
「あ、あんた等こそ何しに来た」
その言葉に、男は顔をしかめる。
「‥スティーブン・ロジャースを探しに来た。奴はどこだ? お前何か知っているんだろ」
「知らねぇ‥。だが、これだけは言える。奴は今、俺達ルブランスから逃げている‥」
男は怪訝な顔をしながら更に尋ねた。
「何? 何故お前らのような烏合の衆が奴を追っているんだ」
ウォーレンは、男の言った“烏合の衆”という言葉が気に食わなかったのか、思わず声を荒げた。
「てめぇ‥俺達を侮辱するのか!!」
そう言って、男を睨み付けた時には既に彼の拳は男の顔面に向かっていた。
だが男は身じろぎもせず、左の掌でウォーレンの拳を受け止める。
次の瞬間には男の蹴りがウォーレンの脇腹に直撃し、彼はそのまま床に倒れた。
「うぅ‥」
男は悠々と、うずくまるウォーレンを見下ろす。
「血の気の多い野郎だ。スティーブ‥スティーブはどこに行った!!」
ウォーレンの顔面を蹴り、男は物凄い剣幕で怒鳴りつけた。
「うぅ‥し、知らねぇ‥ホントに‥知らねぇ‥」
口から血を流しながらも、ウォーレンは必死に訴えた。
「こいつ…」
男は小さく呟くと、もう一発ウォーレンの顔面に蹴りを喰らわし、彼に背を向け歩き出した。
「もう良いんですか?」
後ろに並んでいた男達の一人が、彼に言った。
「ああ。あいつは何も知らん。俺には分かる…。行くぞ」
彼がそう言って玄関の方へ歩いていくと、その後ろから男達も続いて歩き出した。
やがて彼等の姿は消え、ウォーレンは安心したのか床に仰向けで転がり、天井を見つめた。
――その時だった。
「うぅ‥ウォー‥レン‥」
彼を呼ぶ、かすれた声が聞こえた。
ウォーレンは起き上がり、その声の方に向かうと、そこには2人のギャングが目を開けた状態で倒れていた。
――何と彼等は生きていた。
「お前ら‥流石だな。大丈夫だ、直ぐに助けてやる」
彼は2人の体を支え、歩き出した。
続く