一年後―\r
麗華の彼だと、中川を紹介されたあの日から、約一年が経った。その数日後、マンダリンオリエンタルで、辱めを受けた写真を見せ付けられ、知らぬ間に、私の体内には、向精神薬が流し込まれていた。
その日から、月に1〜2度、中川に、写真をばら撒くと脅され、半ば無理矢理、何処かで落ち合い、肉体関係を持っていた。
私は、身体も精神的にも麻痺し、殆んど、抜け殻の様になって行った―\r
今春からアパレル会社に入社し、新入社員として働き出したが、いつ、中川から、連絡が来るかと思うと、携帯電話が気になり、仕事にも身が入らず、常に、気も漫だった。
麗華とも、殆んど連絡を取らなくなっていた。麗華は、何故だと不審に思っていただろう―\r
たまに、茉莉子から、電話が来て居た。
「麗華が、心配してるよ?」
何て、答えたら良いのか解らなかった。茉莉子から、麗華と中川の話も聞こえて来ていた。
私と中川の関係は、麗華は疑ってもいない様だった。
「麗華、婚約したんだって!中川さんと。お祝いしないとねぇ。」
三日前、茉莉子から私に、メールが届き、麗華と中川が婚約したと知った。
それを茉莉子から聞いた途端、私は、今度こそ、毅然とした態度で、中川に、何が有っても、この関係を終わらせると言わなければと決心した。
そんな時、約半年振りに、淳から、携帯に電話が有った。
電話を取るかどうか、一瞬、迷った。半年前に電話が有った時は、気が付いていたのに、電話には出なかった。
メールも、一ヶ月に一度か二度は届いていたが、三ヶ月に一度程、差し障りの無い内容を短文で返す程度だった。
三十秒程、呼び出し音が鳴り、私は、勇気を振り絞り、通話ボタンを押した。
「はい・・・?」
「香里か?・・・、俺、淳だけど・・・。」
淳の声が聞こえた瞬間、心臓が爆発するかも知れないと思う位、締め付けられた。
「うん・・・。久し振りだね・・・。お店、どう?」
「良い感じだよ、巧く行ってる・・・。雑誌とかTVにも、取り上げられて、上々だよ。香里は?仕事、どうなんだよ?少しは慣れたか?」
「うん・・・。少しはね。洋服売るのも楽じゃ無いね。華やかなイメージしか無かったんだけど、中に入ったら、意外に地味だって言う事も、初めてわかった。雑誌、お店で見たよ。あっちゃんのお店、特集組まれてたじゃない!凄いね!」
「香里・・・。あのさぁ・・・。」
「・・・、ん?」
「来週、久し振りに飲みに行かないか?」
思い掛け無い、淳からの誘いだった。