アルバイトがマスターに言った。
「どうだい?今回マスターをやってみて。勉強になったか?」
「はい社長!今回『スナックメラミン』そして『カフェパンデミック』のマスターを演じさせていただいて非常に勉強になりました。将来は本当のマスターになれるよう日々精進します」
「ウム…よし。まずは、私が演じたように、ティッシュ配りから始めてくれ」
二人のやり取りを一部始終見ていたミユキは“労使逆転”のその展開に、頭の整理がつかなかった。
だが、そんな事はどうでも良いと思い直したミユキは、座敷の奥のテーブルに目をやった。
そこでミユキの視界に入ったのは、例の明日香という女性だった。酒が回っているせいか、かなり顔が赤い。
酔っ払っている明日香の手が、右隣りの男の肩に伸びた。
その肩の主は、なんとマモルだった。
――あの明日香という女…狙いはショウでは無く、マモルだったの?
ミユキの心に眠っていたジェラシーが蘇った。
その時だ。
「ダーリン大好き」
明日香が今度は左隣りの男に抱きつき、キスをした。
その男はなんと、あの太ったバスの運転手だった。
そして太った男は言った。
「すんません…今日は妻がすっかり酔っ払ってしまいまして」