ほんの小さな私事(66)

稲村コウ  2009-08-11投稿
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保健所の人達が、死骸の処理を終え、去っていった後も、瀧口先生達と警察官が、色々と話を続けていた。
そこに、後から駆け付けてきた高野さんが、現場に到着した。
「ん?何で高野、ここに来てるんだ?」
高野さんの姿を見つけた瀧口先生は、高野さんにそう言ったが、高野さんは、キョトンとした顔で答えた。
「何でも何も…騒がしかったからきたのよ。何かあったの?」
そう聞いてきた高野さんに、瀧口先生は、一度ため息をついてから答えた。
「立ち入り禁止にしてあるロープが見えなかったのか?…まあ、いい。今さっき、ここで犬とイタチの死骸が居てな…もう、処理は終わったんだが、状況が異様だったんだ。」
「異様?」
「ああ…ここ最近、何らかの原因で、怪我をする件が幾つかあったろう?それらと同様に、先ほどまで、ここに居た犬が、似たケースの傷を負って死んでいたのさ。本当、今までの件で、最悪の事態にならなかったのは、不幸中の幸いだな…。」
その事を聞いて高野さんは、昨日の山下さんの一件を思い出していた。
『そう言えばカズちゃんも、ここでスカートの裾を切られたとかだったんだっけ…。何なのかしら?見えない切り裂き魔?まさか…そんなのじゃない…よね?』
そう高野さんが考えていると、瀧口先生は、高野さんの背を押しながら言った。
「これで状況は解ったろう?何にしても、今ここは立ち入り禁止だ。悪いが外にいってくれ。」
「あー…はいはい、わかりました。わかったから、そんな強く押さないでよ。」
高野さんはそう言いつつ、瀧口先生の手から逃れると、少し距離をとってから一度振り向き、手にしたカメラで現場の様子を写真に撮った。
「こら、何やってる。さっさと外へいけ!」
呆れた顔で、そう言う瀧口先生に、高野さんは「ちょっとぐらい、いいじゃない。」と言いつつ、舌を出して反論の表情を見せたあと、ロープをくぐって、現場の外へと早歩きで去っていった。



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