ミユキは、明日香と運転手という組み合わせに少々面食らっていたが、視線はすでにマモルの側に集中していた。
マモル自身に、居なくなった理由を問いただしたくて仕方が無かったからだ。
マモルは誰かと喋っていた。
鼻にタバコを刺して立っていた抽選会の男がフラフラ移動すると、陰に隠れていた人物が姿を現した。
――それは紛れもなくショウだった。
ショウとマモルは、周囲のお祭り騒ぎとは関係なく、真面目な表情で話していた。
やがて真ん中にいた亀山が言った。
「それじゃここで、監督から一言お願いしまーす」
立ち上がったのはショウだった。
ショウは言った。
「今回は僕の初監督作『ハーフムーン』に協力いただき本当にありがとう。この作品は『半ドキュメント・半フィクション』という手法を取り、主演のミユキには一切伝えずに撮影を続けて来ましたが、晴れて今日ようやく完成する事が出来ました。それもみな、準主役のマモルを始め、ここにいる皆さん全員のおかげです。僕の夢は、愛するミユキが女優として今後メジャーになってもらうことです。ミユキには明日、この完成の喜びと、撮影を隠していた事への謝罪の気持ちを正直に伝えるつもりです」
そして一同からは、惜しみない拍手が送られた。