翌朝。
窓から差し込む明るい日差しと共に、スティーブはゆっくりと目を覚ました。
隣りでは、まだメアリーが寝息をたてながら彼に添い寝している。
スティーブは顔だけをメアリーに向けると、その心地良い寝顔をしばし見つめた。
「美しい寝顔だ」
そう言ってメアリーの頬を撫でると、彼はゆっくりと起きあがり、メアリーを起こさないように慎重にベッドから下りた。
ベッドから下り、ふと壁に掛けられている時計を見てみると、時刻は朝の7時半を回っていた。
「思ったより早いな」
そう呟き、洗面所に歩を進める。
やがて彼は洗面所の前に立つと、目の前の蛇口を捻り、そこから流れ出る冷たい水を存分に顔に浴びた。
一気に眠気が吹き飛んだスティーブはタオルで顔を拭き、鏡を見つめる。
…その時。
「スティーブ! どこに行ったの!?」
居間からメアリーの甲高い声が聞こえた。
直ぐにスティーブは洗面所から飛び出し、メアリーの居るベッドへと駆け寄る。
そこには、血相を変えて辺りを見回すメアリーの姿があった。
スティーブはすかさず、
「どうしたんだ?」
すると、彼の姿を見て安心したのか、メアリーはホッと胸を撫で下ろした。
「…良かったぁ。起きて隣りを見たら、あなたが居なかったから…私を置いてどっか行っちゃったのかと思ったわ…」
「はははっ。可愛いなお前。俺がお前を置いていく訳ないだろ。俺はただ、顔を洗いに行っていただけだ」
それを聞いて、メアリーは徐々に何時もの明るい笑顔を取り戻していき、スティーブにニコッと微笑んだ。
「やっぱりお前は笑顔が一番似合うぜ。俺は、お前のその明るい笑顔が好きなんだ」
「うふ、ありがと」
そう言ってベッドから下り、スティーブの前に立つと、
「あなたとの夜…とても素敵だったわよ」
メアリーはその細い腕をスティーブの肩に回し、彼と見つめ合う。
ゲイリーという呪縛から解放され、自由を手に入れたメアリーは、今とても幸せな気分であった。
――ずっと彼と居たい。
自分の理想とする幸せはスティーブにあると感じたメアリーは、段々とそう思い始めていたのだった。
続く