午前9時。
ゲイリーは自宅のリビングで何やらそわそわした様子で窓から外を眺めていた。
(まさかあいつが、我々の包囲網を抜けるとは…侮れない奴だ…)
彼が心の中でそう呟いた時、背後から足音が聞こえた。
すかさず振り返って見ると、そこには1人の幹部の姿があった。
「どうだった?」
ゲイリーは期待に胸を膨らませながら、そう尋ねた。
「タクシー会社に問い合わせてみたら、やはりスティーブン・ロジャースというドライバーはいました」
「やはりな。それで、ナンバーは?」
すると、幹部はズボンのポケットから何やら一枚の紙切れを取り出した。
「これです」
幹部はそう言って、その紙をゲイリーに手渡した。
ゲイリーはその紙にメモられているスティーブのタクシーのナンバーをまじまじと見つめる。
「で、目撃者は?」
「結構いましたよ。それで、彼らの証言通りに順々に追っていったら、とある田舎町のモーテルにたどり着きました」
それを聞き、ゲイリーは目を丸くさせた。
「ほぉ。早速、そこに部下は向かわせたのか?」
「えぇ。ですが、既に奴らはその町を出ていると思います」
そう言って、幹部は顔を俯かせた。
「なら、その田舎町から一番近い街はどこだ?」
ゲイリーは煙草を手に取り、火を付ける。
「確かバーティスていうデカイ街です」
「なるほどバーティスか。ふふっ、その街に向かってる可能性は高いぞ。すぐに仲間達をそこに向かわせるんだ!」
「了解!」
そう言って背を向けて歩き出した時、背後からゲイリーが言う。
「待て、お前にはやって貰いたい事がある」
すぐに幹部は振り返ると、
「何です?」
「知っているだろ? “奴ら”が姿を現した。お前は他の幹部達と共にそいつらの居所を探って欲しいんだ」
それを聞き、彼は動揺し始めた。
「な、何だって? “奴ら”を…」
「早く行け…。見つけ次第、潰すんだ!
“奴ら”は何を企んでいるか分からん。それに、“奴ら”は俺の親父の…」
そこまで言って、ゲイリーはめったに見せない悲しげな表情を浮かべながら俯いた。
続く