ミユキは、そっと障子を閉めると、ようやくトイレへと向かった。
ショウにも、そしてマモルにも、こちらから話し掛けることはしなかった。
『ハーフムーン』の打ち上げは、まだ続いていた。
中では、亀山がこう喋っていた。
「いや〜それにしても、今回の映画は低予算でしたね〜。出演者は皆、何役もこなすし、抽選会の景品は出演者の私物だし、ミステリーツアーの場所は近くの無人島だし、飛行機はセスナ機だし」
「セスナは操縦してないでしょ…座ってただけでしょ」
酔っ払った明日香が、不意に亀山にツッコミを入れた。
「えぇ、ミユキさんが眠るまで待って、それからボートに乗り換えて、あとはエッチラホッチラと無人島まで漕いで…ほ、ほっといて下さいっ!」
亀山がそう言うと、会場内に笑いが起こった。
その頃、ミユキがサチ子のところに戻って来た。
「ごめんね〜サチ子。遅くなって」
そう言ってミユキは障子を慌ただしく閉めると、再び座り、サチ子の顔を見つめた。
サチ子は静かにニコニコと微笑んでいる。そして、ミユキに向かってこう言った。
「どう?スッキリした?」
「…ウン!」
ミユキも、明るく笑って答えた。
――ハーフムーン・完――