「お前の負けだ…」
ウォーレンは男を壁に押し付け、両手で男の首を思い切り締め付ける。
だが、それでも男の顔は苦痛に歪む事はない。
それどころか、男は笑みさえ浮かべていた。
「はははっ」
笑う男をウォーレンは訝しげに見つめると、突如と腹の辺りに違和感を感じた。
「…!?」
やがてその違和感は激痛に変わり、彼は思わず首から手を離す…。
…男の手には血にまみれたナイフが握られていた。
そのナイフの刃先からは、付着したウォーレンの赤黒い血が音を立ててこぼれ落ちている。
「て、てめぇ!!」
そう言って殴りかかるウォーレンに男は容赦せず、ナイフでウォーレンの首を切り裂いた。
ウォーレンの首からは大量の血が噴水のように勢い良く噴き出し、彼はそのまま断末魔の叫びをあげる事もなくその場に倒れた…。
「おい、お前…」
彼は、傍らでうずくまる幹部に言った。
「なんだ…」
「スティーブの居場所を教えろ…」
彼はそう言って、男の首もとにナイフを近付ける…。
「ひ、ひぃぃ…」
男は泣きじゃくりながら、潰れている片目を抑えた。
「知っているんだろ…早く教えろ!」
ナイフから目を背けながら、
「お、恐らく…ば、バーティス…に…む、向かって…いる…」
「バーティスか…調度良い」
彼はそう呟くと、そのまま一気に男の首を切り裂いた…。
そしてもう1人、腕が折れてうずくまる男にも、彼は容赦せずにトドメを刺す。
やがて、彼は懐から携帯を取り出してどこかへとかけ始めた。
『何です?』
彼の部下が電話に出た。
「お前等のグループはまだバーティスだろ?」
『えぇ。でも、これから戻る所です。取引は済みましたから』
「いや、まだそこにいろ! スティーブン・ロジャースが来る可能性がある」
部下はそれを聞いて、思わず目を丸くさせた。
『本当ですか? じゃ、じゃあ俺達はどうすれば』
「見つけたら奴を捕まえろ! 後から俺も行く」
『了解。それでは後ほど』
電話を切り、彼は何事も無かったかのように路地裏から去っていた…。
続く