よくある話。いや、よくないか。
俺は柿本修一。中学三年生。いや、正確には昨日卒業したんだ。だから、今春休み。
俺は同じクラスの友達、ケンとカッちゃんと一緒に、受験勉強で長い間できなかったロールプレイングゲームを、これでもか! ってくらいやってた。
「ここ、どっちに行ったらいいんだ?」
「やべぇ、もうHPないぜっ!」
ゲームもいよいよ大詰め。俺らはラスボスが待つ『悪魔の城』にやって来た。
その時、泊まりがけ・徹夜のゲーム三昧のせいか、目の疲労も親指の痛みもピーク、さらに睡魔まで襲ってきて、俺は意識が遠退いていった。
「ウ……シュウ……!」
……誰かが、俺の名前を呼んでる。
「気がついたか!」
目を覚ますと、ケンとカッちゃんが俺の顔をのぞき込んでいた。
「お前ら、どうしたんだよその格好……」
ケンは何やらとんがり帽子をかぶっていて、杖を持っていた。まるで魔法使い。カッちゃんは僧侶の格好……。
「俺達、ゲームの世界に来ちまったみたいなんだ!」
――は?
んなバカな。ゲームのし過ぎでついに頭イカれたか……。
しかし、そんな俺もカッコいい鎧とマントを身にまとい、ぶっとい剣を腰に下げていた。まるで勇者……。
コイツらの話は本当らしい。目の前にはいかにも最後のダンジョンって感じの怪しげな城が……。『悪魔の城』じゃん。
自分たちの置かれた状況に戸惑うかと思えば、二人はかなりやる気だし。
「よし! 魔王を倒しに行くぞ!」
「ってか……何で俺、僧侶なんだよ! 俺だって勇者がよかった」
「文句言うなよ。お前はパーティの回復役を担う大事な役割なんだぜ?」
「そうだけどさぁ……」
いや、もはや問題点はそこではないだろ!
「さぁいくぞ!」
カッちゃんの気合いの入った声。
ケンは杖でカッちゃんの頭を殴った。
「痛ぇ! 何すんだよ!」
カッちゃん、50のダメージ。
「何お前が仕切ってんだよ! そういうのは勇者がやるんだよ!」
えっ?俺?俺がやんの?
面倒くさいなぁ……。でも、楽しそうにはしゃいでいる二人の顔を見ると、そんなこと言えないし……しょうがない、やってやるか。
「さぁ、いくぞー……」
「「 おー!!!!! 」」
なんだこの温度差……。