20年
この狭く、薄汚れた部屋で生活をしてきた
きっと、外にいた時間よりも
この部屋で過ごした時間の方が長いだろう
多くの同世代より、この男はこの空間にいる時間が長かった
5年前の10月
雨が激しく降り続けていたあの時から
この男は外の世界に足を踏み出してはいない
部屋の明かりはついていなく
窓から入る街灯の明かりによって
部屋の中は薄暗く光っていた
男はひたらすら窓の外を眺めながら
6年前に流行った音楽をボソボソと口ずさんでいた
男の部屋の窓から見える景色はこの5年間で大きく変わった
目の前にあった家は改築されたし、奥に見えた一本杉はなくなった
「・・・」
時々、男はこの時代の流れが無性に恐ろしく感じた
自分だけが取り残されている感覚
5年間から自分は死んでいるかのように、社会に認知されていないという孤独
「お前、生きていて楽しいか?」
そう父に言われたのをなぜか男は思い出した
窓の外をのぞくと
夜の暗い空に混ざりきらず、黒い煙がモクモクとたきあがっているのが見えた
あれはどこの家だったか
男はその日、死んだ