「こいつらは一体…」
スティーブはそう呟き、気絶する男のそばにしゃがんだ。
…すると。
「…うん?」
何かに気付いたのか、彼はおもむろに男の首を持ち上げ、首筋に目を通した。
やがて、その首筋を見たスティーブの顔に驚愕の色が浮かぶ…。
「どうしたの?」
背後から、メアリーが心配そうに声をかけた。
「こいつの首筋見てみろ」
彼に言われ、男の首筋に目を通すメアリー。
しかし、彼女の表情は少しも変わらない。
「このタトゥがどうかしたの?」
彼女の目に入ったのは、二挺の巨大な大鎌が交差しているタトゥーであった。
メアリーには見覚えないが、スティーブにはあった。
「このタトゥ…“クローディアス”か」
彼はそう呟き、男の首を床に叩きつけるようにして手を離した。
「クローディアス? なにそれ?」
スティーブは立ち上がり、煙草に火を付ける。
「ロシアの犯罪組織だ」
「へぇ〜どんな奴らなの?」
メアリーは目を輝かして聞いた。
そんなメアリーに、スティーブは少々呆れた顔を浮かべると、
「とにかく、ヤバい連中だ。マフィアの中でも頂点に君臨するって言われている」
「じゃ、じゃあどんな事してるの?」
「色々だよ。テロ支援や薬物売買、武器の密輸とかな。まあ、こいつらの最も得意とする事は犯罪の請け負いだ。最早それが奴らの専門だな」
彼はそう言うと、天井に向けて煙を吐き出した。
「奴らが勢力を広げる為に、アメリカに進出してきているっていう噂を聞いたが、まさか本当だとはな」
「じゃあ何でそんなヤバい連中があなたを襲ったの?」
「分からん。謎だ。くそっ…俺が何時奴らを敵に回したって言うんだ」
彼は頭の中で思い当たる事を必死に考えたが、やはり思い浮かばない…。
そこでメアリーが言った。
「ねェ、そいつらの専門は犯罪の請け負いなんでしょ? もしかしたら、ゲイリーが連中に依頼したのかも知れないわ。あの人、色んな組織と取引しているから」
スティーブは煙草を吐き捨て、靴で踏み潰す。
「なるほどな。はは、あの人じゃなくて“あいつ”だろ?」
「うふっ、そうよね!」
続く