バシャッン!!!!
クジラを大きな音を立てました。
そして彼に話かけてきました。
大きく力強い体とは裏腹にとても優しく穏やかに。
「やっと目覚めたのね。
君の居場所はここではないのよ。
さぁ、あなたのいるべき所へ帰るのです。」
彼は不思議でありません。
クジラが話すことではありません。
それよりも
言われた内容に疑問だったのです。
何のためにここにいるのか。
何のためにどこかへいかなければいけないのか。
ここにいてはいけないのか。
自分の居場所があるのか。
彼は自分が『人』と言うことを理解していません。
そして『人』である彼が海の中で呼吸をしていることを理解していません。
それが故に、クジラは今まで彼を見守ってきてくれたのです。
そして目覚めた彼に諭すかのように話をしたのです。
彼はクジラと別れることを心のどこかで淋しく思いました。
そして彼はクジラに聞きました。
「自分の居場所はここではないの?
ここではいけないの?」
クジラは答えます。
穏やかに。
「ええ。
そうよ。
ここではダメなのよ。」
その言葉を聞いてがっかりした彼は静かに頷きました。
クジラも少し淋しそうです。
彼はまだ知りません。
世界で何が起こったのか。
世界で何が起こっているのか。
自分の名前も心もわからずここを旅立つことになりました。
クジラは別れ際に彼に言いました。
「あなたの名前は望(のぞむ)。
どうか自分を信じて。」
望は力強く
「はい!!!」
とクジラに返事をしてクジラとわかれました。
後ろを振り返らずに。
後ろを振り返ってしまったら涙を見せることになると必死に前へ進みます。
この先に何が待っているかもわからずに…。
望は前に進むのです。