「もちろんそれもあるよ。でもそれだけで推薦蹴ったら変だろ?」
悠が言った。
「じゃあなんでこっちに来たんだよ。悠が隣の県の有名な柔道の名門校から推薦きてたのは俺だって知ってた。部長だったしな。」
「それはさ、目標なんだよ。俺にとって修二は憧れだった。」
「はぁ?」
悠のやつ何言ってんだ?
俺がお前の目標なんて初めて聞いたぞ。
「俺が入部したとき、中学の先輩も先生も俺の実力をかってた。けどさ、その俺と同じ初心者の修二はさ、群を抜いてたよ。先生だって、親の血かって言うくらいだった。」
悠が笑う。
「父さんはたいしたことねぇよ。」
「バカ言うな。親父さんがすごかったのくらい知ってるよ。初心者なのにすごかった修二は俺にとって憧れだった。だから修二が中3の最後、負けたときは驚いた。」
「それは悠、俺の買い被りすぎだ。俺はよえーよ。バカみたいに勝った気でいて、結局負けたんだ。俺なんか全然ちっちぇーよ。」
「そんなことねぇよ!!」
悠が珍しく強い口調で言った。
「修二は弱くなんかない!!強い!!前は負けたけど今度は勝つんだ!!」
修二は驚いた。
昔よく悠のケンカに巻き込まれてたとき、相手に話しかけたときと同じ口調。
まさか自分がその強い口調で言われるなんて考えたことがなかった。
ケンカしたってなにをしたって、修二にとって悠は根は優しい存在だからだ。
悠はそう言ったあと声のトーン落として言った。
「だから、頼むからそんな弱気なこと言わないでくれよ。修二についてけば、上を目指せるって思ってること、間違いだとか感じさせないでくれよ。」
少しの沈黙のあと、俺たちの試合がもうすぐ始まることを知った。
「悠、悪かった。勝つから。ぜってぇ勝つから。よく見とけよ!!」
それを聞いた悠は笑った。
「うん。絶対俺が回すから。」
そう受け答えをし、試合場に向かった。