淳と二人で、道玄坂を抜けて、代々木公園の方へ向かった。
高校生の頃、お金が無くて、買い物帰りによく立ち寄った。何をする訳でも無く、二人でベンチに座り、何時間も話していた、思い出の場所だった。
最初、淳の後ろを下ばかり見て歩いていた。
そのうち、淳は、立ち止まり私が淳に追い付くまで、待っていた。
「お前、歩くの遅せぇよな?昔から。」
「そう?そんな事無いと思うけど。」
私は、色々な事を思い出していた。あの頃は、普通に淳と居られる事が幸せだった。お金は無くても、一緒に居られるだけで、安心し、楽しく思えた―\r
「あっ・・・、あそこの店、覚えてっか?」
ふと上を見上げてみると、そこには、どこにでも有る、ファストフード店が有った。
「行った事有るよね?」
「昔、買い物してから、喉渇いたって入った事有っただろ?」
私は、言われて初めて、思い出した。
買い物帰り、淳と安いからと言う理由で、このファストフード店に入った事を―\r
「有ったね・・・。お金無いから、一つだけ買ったジュースをあっちゃんが、殆んど飲んじゃって。私が、飲もうと思ったら、もう氷しか残って無くって・・・ね。」
「あの時は、マジで、金無かったからなぁ・・・。借り返すよ。ジュース、二つ買おう。今は、ジュース位買えるからよ。」
そう言って、淳は、一人で店に入り、ジュースを二つ買い、紙コップを両手に持って、店から出て来た。
「はい、これ。あの時の借りは、これで返したからな!それとさ、一つだけ・・・、後悔してる事が有んだ・・・。」
「後悔・・・?」
「TVとか映画で、気が付くと昔に戻ってた。みたいなの有んじゃん?もし、今の状態のまま、タイムスリップ出来る様な事が有ったらさ・・・、お前を絶対離さないんだけどな・・・。後悔してんだ、今でも。あの時、どうして別れたいって言われて、止められ無かったのかって・・・。
」
幸せだった、あの頃の事を思い出し、涙が、ポタポタと地面に溢れ落ちた。
「あっちゃん・・・。」
淳は、私が何で泣いているのか知らない―\r
もう、自分を止める事が出来なかった。
ジュースを淳に渡し、両手が塞がった淳の腰に、両手を回した。私は、頭を淳の左胸に沈めた。
「香里・・・?」
「暫く、こうしてて良い?」
「あぁ・・・。」
「あの頃に、戻れるなら、私も戻りたい・・・。あっちゃん・・・、私、私ね・・・、あっちゃんと別れようって、言ったのはね・・・。実は・・・。」
もう、二度と淳と離れたく無いと思った。
この時はまだ、淳とずっと一緒に居られるのだと信じて疑わなかった―\r