「……という訳だ」
スティーブはこれまでの経緯を分かり易くジュリーに説明した。
「なるほど。これからは?」
「さあな。この間々逃げ続けるか、連中と戦うか…。ルブランスならともかく、あのロシアンマフィアを相手にするのは無理があるな…」
するとジュリーは溜め息をつき、残り少ない珈琲を一気に飲み干した。
「別に逃げ込んで来た訳じゃないんだ。只、長い間姉さんとは会ってなかったから、たまには顔を出そうかなと思って今こうして来たんだ」
「へぇ〜。嬉しいわね」
そう言って、隣りに座るアンディの頭を撫でる。
「私はしばらく仕事が休みだから、今日は泊まって行っても良いわよ。アンディも夏休みで暇だから、相手してやって」
そこでメアリーは、恐る恐るジュリーに尋ねる。
「あの、夫さん…」
「いないよ」
メアリーが言い終える前にジュリーはキッパリと言った。
「私はシングルマザーよ」
「そ、そうなんですか。大変ですねぇ」
どうやらジュリーは弟のスティーブとは違って、冷静沈着な性格のようであった。
「あ、そういえば今日の夜、私とアンディ『グリーンズ・パーク』に行く予定なんだけどあなた達も来る?」
『グリーンズ・パークとは、ジュリーの住む大都市『バーティス』にある大規模な遊園地である。
「グリーンズ・パークかぁ。久しぶりだな。どうする? メアリー」
メアリーはスティーブの腕を握りながら、
「勿論、行くわ。うふ、やっとデートらしい事が出来そうね」
メアリーは目を輝かせ、スティーブを見つめる。
「でも姉さん、遊園地に行っている時に連中に見つかったら、姉さんまで巻き込まれる事になるぞ」
「…分かってるわよ。まあいいじゃないの。そういうのもたまには。ねっ? アンディ」
「うん。楽しいの大好き!」
そんな2人のやり取りを見て、メアリーは思わず驚愕した…。
「…やっぱりスティーブに似ているわね」
続く