ピタッと子供が止る。
そしてゆっくりと道の中央から路肩へ移動した。
やっと気付いたらしい。
とうとう日も暮れ、微灯だったライトを本格的に付ける。
子供は避けたが、フラフラ歩いていた事を考え、いつ飛び出してくるか分らないのでやはり徐行で子供の横を通った。
通り過ぎる際、どんな子だろうと興味が沸いてきて、ゆっくり運転しながら子供の様子を伺った。
俺は心底後悔した…
それは子供でも何でも無く、ただ子供位の背丈の真っ黒な人影。
まるで前身タイツでも着ているかの様なソレがユラユラ揺れながらスローモーションの様にゆっくり歩いている。
どこが顔でどこを見ているのかなんて分らない。
けど、何だかソレと目が合った気がした。
前身鳥肌が立って、寒気がする。よく分からないが、関わってはいけないもの。
そのまま横を通り過ぎて、一気にアクセルを踏む。
違反だとか関係ない。この場から離れたい。
エンジンが唸りを上げた時、目の前を何かが横切った。
とっさにブレーキを踏む。急ブレーキに体が前へつんのめる。
顔をあげて、俺は次の瞬間アクセルを全開に踏んだ。
目の間にさっきのアレがいた。笑っている様に見えた。
ドンッ!!!!鈍い音と、ハンドルに衝撃が走る。
ブレーキを踏んで恐る恐るバックミラーを見る。
後方の道に黒い影が横たわり動かない。死んだか?
暫く様子を伺っていると、女子高生が自転車で黒い影の横を過ぎた。「キャー」悲鳴が聞こえる。サイドミラーで見ると女子高生が携帯で電話している。
しかもアレに近寄って、懸命に何かしている。
俺は車を降りて、アレの側へ恐る恐る近寄る。次第に女子高生の話し声が聞こえる。
「はい。今降りて来ました。男性です。男の子息してないです。」
「!?」
暗い道端に目を凝した。
そこにはアレではなく、小さな男の子が血を流して倒れていた。
「お…俺は…」
女子高生の冷たいまなざしがしっかりと見えた。
終