学校は騒がしい…。
サークル入れだの何だのかんだの…。
「陽斗、何かやるか?」
「どうしようか…、家帰ってもつまんねぇしな…。」
「なぁ、ショーギってなんだ?」
「しんねぇ、そんなの習わなかったよな…。あれは?あにめ研究…?何だあにめって?」
「あにめも習わなかったよな…わかんない事だらけだな…。」
「あぁ…困ったな…。」
…困るのは当然…。
人間界へ行く前に、人間の生活の事や流行りの事を予習しなかったからだ…。
「とりあえず、辞めておこうぜ…。」
僕はライアンの肩を叩き歩き出した。
「まて!ハーン!待てって!!」
グイっと腕を引っ張り、僕を呼び止める。
「おい!また名前…。」
「名前はどうでもいいだろ!あれ見ろ!」
ライアンが指差す方向にエリンがいる…。
「エリンだよな…。」
「あぁ…エリンだ…。」
やっぱいたんだ…。
そう思い、また歩き出す。
「おい…いいのか…。取りあえず挨拶とか…。」
「何だよ挨拶って、お前関わるなって言ったじゃないか…。」
僕はすたすたと歩く。
ライアンはその後ろからついて来る。
「言ったけどよ…。なんか…ほら…寂しそうだったし…。」
ライアンは何言ってるんだ?
「しばらくは放っておく。エリンから話しかけてきたら話せばいいだろ。」
僕はそう言って、ライアンの顔を見た。
「…そうだな、そうしよう。」
ライアンは僕の言葉を素直に受け止め、一緒に歩き出す。
実は僕も、エリンには関わりたくないからだ。
そう、関わりたくない理由ができた…とゆうか、思い出したからだ。
小さい頃、エリンとケンカをして、僕はエリンを傷付けた。
エリンは片方の耳が聞こえない。
小さいとはいえ、僕は『禁断の魔力』を使ったからだ…。
よく覚えてないけど…。
龍族だから、あの程度の怪我で済んだ…。
ケンカの理由も、何故禁断の魔力を使ったのかも、もう忘れてしまったけど…。
エリンに僕は消されるかもしれない…。
そう思ってしまった…。
人間界にいる間は平気だけど…。
なんとなく、そう思った。
ケルベロスの僕より、龍族のエリンの方が強い…。
なんて情けない…。
その時、周りの動きが急に止まる…。