淳の胸は、あの頃と同じで、とても温かかった―\r
「香里・・・?俺に言えなかった事が、何か有んだろ?話してくれよ。香里も、俺と同じ気持ちなら・・・。もう・・・、失いたく無いんだよ、お前の事。好きな奴が出来たから、別れてくれって、あの時、言ってたけどさ、そんな奴・・・、ほんとは居ないんだろ?」
淳の言葉に、胸が高鳴った。
淳は、私がその場凌ぎで、とっさに付いた嘘を見抜いて居たのか―\r
本当は、そんな男性は居ないのにも関わらず―\r
私が、付いた嘘を・・・、淳は―\r
勇気を振り絞って、本当の事を話すべきなのか・・・。
この場に及んで、まだ、心中迷っている、私が居た―\r
淳とは、離れたく無い―\r
全て、話すより他無いのだと私は、決めた・・・。
私は、淳を両手で少し押して、距離を作り、ゆっくり話し始めた。
「あっちゃんが、私と日帰り旅行に行く為にバイトを探してくれて、面接に行くって行った日ね・・・。」
「あぁ・・・。」
「家の近くの駅に着いたら、凄い雨が降ってて・・・。濡れない様に、走って家に向かってたの・・・。家と駅の間位の所に、暗い神社が有ったでしょ?その隣に、一台、ワゴン車が停まってたの。」
「それで・・・?」
「最後まで、聞いてね・・・?その車から、急に男の人が降りて来て、近くにコンビニ無いか?って聞かれて・・・。道順教えたら、次の瞬間に、車に押し込まれて・・・。」
「それって・・・、まさか、お前・・・。」
「車には、四人男の人が乗ってて・・・。そのうちの一人に、私・・・。」
「・・・、まさか、知らない男に、犯されたとか・・・?違うよな?違うって言ってくれよ、香里?なぁ・・・?違うって・・・。」
淳は、先程までと顔付きが一気に変わり、恐張った表情で、私の両肩を揺すった。
私は、首を横に振りながら、続けた。
「違わないのよ・・・、あっちゃん、私は・・・、汚れちゃったの・・・。日帰り旅行の日、あっちゃんと結ばれたいって思ってた・・・。なのに、その前に・・・。私は・・・、知らない人に汚されたのよ・・・。誰にも、今まで話せなかった・・・。親にも、友達にも・・・。今、初めて・・・、自分以外の人に話したの・・・。」
淳は、二、三歩、私に歩み寄り、私を強く抱き締めた。
同時に、私の目からは、今までの人生で、一番と言って良い位、涙が止めど無く流れた。
五年間、誰にも話す事の出来なかった自分の中だけの秘密が、今、解き放たれたのだった―\r
「許せねぇ・・・。相手は誰なんだ!!!!香里が、知らない奴なのか?」
淳の目からは、涙が溢れ落ち、見た事も無い位に血走って居た―\r