それは一瞬の出来事であった
望の体は大きな波に飲み込まれ、再び呼吸の出来ない世界へと引きずり込まれてしまう
薄暗く、恐怖しか広がっていない水中で望はもがき苦しんだ
苦しい…
苦しい……!!
もう、さすがに限界であった
体内に、容赦なく大量の海水が入り込んでくる
やがて意識を失い、望はゆっくりと目を閉じた
だが望はある夢を見ていた
必死に母を追いかけている夢だ
遠ざかる母の背中を見つめながら、追いかける
けれど、絶対に追い付けない
どんなに走っても
母の背中は遠ざかって行くばかり
望は泣き崩れ、嘆く
夢はそこで終わる
夢が終わったと同時に望は目を覚ました
目には涙がたまっていた
望は零れ落ちた涙を拭いながら辺りを見渡す
そこは、誰かの家のようであった
暖かい日差しが窓から差し込んでいて、とても気持ちが落ち着いた
しかし、頭痛と吐き気が酷かった
何故だろうか
「………!」
そこでやっと自分の身に何があったのかを思い出した…