真夜中の路地裏に、一台の車が停まっていた。
やがてそのドアが開かれると、そこから二人の男が姿を現す。
男達は車のトランクを開け、中から1人の血にまみれた男を引きずり出した。
「無駄死にか」
「馬鹿め」
男達は嘲笑いながら、血まみれの男を石畳へと放り投げた。
「ふぅ〜寒い! 戻ろうぜ」
雪が舞い落ちる中、男達はサッサと車に乗り込んで路地裏から去っていった。
「うぅ…」
どうやら、石畳に転がる血まみれの男はまだ生きているようだ。
だが既に虫の息で、何時死んでもおかしくない状態である。
増してやこの寒さ。
彼が生き延びる事は最早不可能である。
しかしそれでも彼は寒空を見つめながら、ひたすら言葉を発していた。
するとそんな彼の元へ、
「だ、大丈夫かあんた」
虫の息の彼に声をかけたのは、小汚い格好をした男であった。
髪はボサボサで、口の周りには豊富な無精髭が生えている。
そして冬だと言うのに派手に汚れたYシャツ一枚に、ボロボロのジーンズ。
まさに彼は、寒さに震えるホームレスであった。
体をガタガタ震わせながら、彼は男の顔を覗き込む。
「ゆ…る…」
「おい! 何言ってるんだ!」
彼がいくら声をかけても、男は何も答えない。
…そして
「…モ…ガン…がはっ」
男は最後に口から血を吐き出すと、そのまま息を引き取った…。
「し、死んだのか…」
彼はまだ疑う様子で、男の顔を覗き込む。
…その時。
突如倒れている男の体から、発光体のような物が飛び出した。
「何!?」
その発光体は数秒の間宙を浮遊すると、一気に倒れている男に向かって落下した。
その直後、男の着ている革のジャケットが眩く光り出す。
「な、何だ?」
男は驚きながらもその光景を見つめた。
やがて5秒程光り続けた後、その光はゆっくりと消えていく。
「はぁ…一体」
彼は驚愕するが、それよりも強烈な寒さに彼は耐えられなくなってきた。
「寒い…あのジャケットを着れば…」
彼はそう言うと、少し抵抗はあったが、男の着ているジャケットを無理やり脱がした。
そして迷わずそれを着る。
…その時。
彼の体に異変が起きた。