「あっちゃん・・・、落ち着いて聞いてね・・・、一年前、あっちゃんと待ち合わせしてたあの日、麗華の彼氏と逢ったって言ったでしょ?」
「麗華の彼氏?最近、婚約したって言う彼氏か?」
「うん・・・、でね・・・。」
「麗華の彼氏って、何か関係有るのかよ?」
「関係・・・、有るの。有ったのよ・・・。あの時、偶然、麗華の彼氏に逢って、ビックリした・・・。私を汚した相手だったの・・・。」
淳は、唖然としていた―\r
普通、そんな偶然は、なかなか無い―\r
偶然なのか―\r
必然だったのか―\r
私の中でも、未だに答えなんて出る筈も無かった―\r
「は?それ・・・、人違いって事は・・・?」
「私も、最初は、そう思ったの・・・。違うって、思いたかったし。でもね・・・、相手が私の事を覚えてて・・・。」
「それで、相手は?何か、その時の事、香里に言って来たのか?」
「うん・・・。」
淳は、半ばパニック状態になりながらも、隣に立って居た、街路樹に突き立てた拳で、何度も苛立った気持ちをブチ撒けて居た。
「俺の事、覚えてるよな?って。麗華には言わない方が良いって。言っても、信じないからって・・・。私、直ぐに気分悪くなって、適当にその場を繕って、家に帰ったんだけどね・・・。家の前で、待ち伏せされてて。」
淳は、無言で頭を抱え、何度も、溜め息を付いた。
「香里・・・、俺と麗華はさ、お前も知ってる様に、幼稚園からずっと一緒でさ、幼な馴染みなんだよ・・・。アイツも、そんな奴だと知らねぇで、婚約したんだろ?もう・・・、言葉が出ねぇよ・・・。待ち伏せされて、どうなったんだよ?」
「防犯用のスタンガンを撃たれてね・・・、気絶しちゃって。気が付いたら、手足を縛られて、その人の別荘に連れてかれてて・・・。」
「どうして・・・、最初の時に、警察や俺に言わない!!」
私は、自分でもそうした方が良い事は、誰に言われ無くても解っていた。言いたかったけど、言えなかった。
「言いたかったけど・・・、言えなかったの・・・。」
「でもよ!!!」
「あっちゃんに、嫌われたく無くて・・・。」
「そんな事で、香里の事、嫌いになるかよ!!お前が悪い訳じゃねぇんだぞ?」
「そうだけど、私・・・。」
また、涙が留めど無く流れた。
「俺が、香里や麗華の為にも、何とかするから・・・。お前は、心配すんな・・・。」
「何とかって・・・?」
「俺に任せとけ。大丈夫だから・・・。」
淳は、私の頭を優しく撫でた。不安は消えなかったが、淳に寄り掛りたかった―\r