エリカの自宅は、街はずれの公団住宅の一室にあった。十二月にしては暖かい日の夕暮れに、エリカの案内でやってきた団地は所々がライトアップされ、早くもクリスマスモードに染まっていた。
玄関の重たいドアを開けた瞬間、我が目に飛び込んできたのは非情な現実だった。同時に宗教は全く信じない僕でさえも、神様どうか何かの間違いであって欲しい! と祈らずにはいられなかった。
目の前にいたのはエリカの母親トモミ、そう面影でも何でもない、確かに老けてはいたけれど正真正銘の元彼女トモミだったのだ。
エリカの母親が元彼女と同じ名前だということは聞いていたけれど、まさかこんな形で再会を果たすとは……。運命の悪戯というには、あまりにも度が過ぎるではないか!
トモミの口数は極端に少なかった。トモミにとって重要だったのは、娘が連れてきた男が自分の元彼だったこと、そして自分と同じ十代で母親になるかもしれないことではなかったのだ。
「エリカの父親はあなたなの……」
窓の外では鮮やかなイルミネーションが輝き続けていた。