「アンタ、鈍感すぎ」
俗に言う出来ちゃった結婚と、出産を済ませた直後に単身赴任になった僕を、君は何年経っても罵り最後に決まってこう言う。
確かに僕は鈍感だったに違いない。
悪い結婚を見抜けずに深みにはまっているのだから。
でも君は鈍い男が好みなんだろう。
四十歳近いのに恐ろしくサバを読み、絵文字をびっしり使ってさ。
その相手もさぞかし「鈍感」なんだろうな。
可笑しくなってくるよ。
でも僕は君のような女性はタイプではない。
能動的に食事をし、満腹になったら横になる。
ほったらかしの庭に、手付かずのガーデニング用品を見た時は本当に苛立ったよ。
愛していた頃の君が懐かしいよ。
とてもとても。
君も愛していないんだろう、きっと。
もう終わりにしないか。
似たもの夫婦とはよく言ったものだ。
僕と君は似ているらしい、皮肉にも。
僕も君も鈍感なんだよ。
僕が横に立っているのに気付かないのが何よりの証拠だよ。
でも、なによりも君が一番気付くべきだったのは、僕がスコップを新調して土を買い足した事。
さあ、終わりにしよう。