「続きは無いのか……」
耐えきれなくなった次男が口を開いた。
「親父はいつも、俺たちを驚かせるのが好きだったけれど……」
「ちょっと待って」
三男があることを思い出した。
「確かカセットテープを使った遺言は無効なはずだよ」
「本当か」
「そういえば、前にテレビでそんなことを言っていたな」
「ああ良かった。無効だ、無効」
「じゃあ、仲良く一千万ずつ分けよう」
兄弟達は遺産を三等分することで納得し、カセットテープも処分してしまった。
子供達の様子を雲の上から見守りながら、男は残念そうに呟いた。
「やはり言うとおりにしなかったのか。松の木の下を掘っていたら、一億円の当たりくじが埋まっていたのに……」
先に天国に来ていた男の妻は、隣の夫の表情を見て、「何それ」と小さく笑った。