『私…俊介と付き合ってたんだ』急にそんなことを言ってしまった。
『…知ってたよ』千秋は答えた。
『知ってたんだ…』
『ああ……』千秋はゆっくりと頷いた。
『この桜を見て思ったんだけど、私と俊介の恋って桜に似てるよね…』
『…………』
『パッと恋が咲いたと思ったらあっという間に散っちゃうんだもん。儚いよね…』
私は桜の木を眺めた。桜が咲いていないこの木は何の魅力も感じなかった。
『楓…』
『それにね…桜みたいな綺麗な恋だったから…忘れられないの…。俊介のことを忘れたくても忘れられないの!』
私は…この詰まるような思いでこの身が張り裂けそうな感じがした。
『…忘れない方がいいよ。楓が俊介のことを忘れないでずっと覚えていたら、俊介は…楓の中でずっと生き続けるんだから』
俊介が生き続ける…。その言葉を聞くと、心が少し軽くなったような気がした…。
『そうだよね…。今度は私が俊介を助ける番だよね』
何年たっても俊介のこと…忘れないから……。