ある日僕は、交通事故に遭った。
目覚めたのは、見知らぬ街。いや、セカイ。
見るもの全てがファンタジー。未来兵器もある。魔法もある。
そしてファンタジーにお約束の、ストーリーがあった。
どこにでもある、平和の為に敵を倒す物語。
幾多の闘いの日々が続いた。長い、永い日々だった。
色々な事を学んだ。様々な事があった。
家族の大切さを知った。命の尊さを教わった。
そして、全てが終わり、平和を手に入れた日。僕は、何もかも打ち明けた。
僕はこのセカイの住人じゃない。此処は、僕にとっては夢なのだと。
・・・・・・覚めたくなかった。でも、みんなは言う。
大切なのは、家族だと。帰るべき場所が、そこには在ると。
僕はその時、やっと判った。一番身近で、一番美しい、宝物に。
そして僕等、共に闘った仲間達は、『友情の証』になる物をつくり、それぞれ一つずつ持った。
その出会いを、永遠に忘れない為に。
別れの時が来た。
僕は、泣いていた。
僕が最後に言った言葉は、涙でくしゃくしゃになった顔で伝えた、「ありがとう」だった。
目が覚めたら、見知らぬ天井。
その目を覗き込み、涙を流しながら呆然とする人の姿があった。
「お兄・・・ちゃん?」
そういえば僕には、妹がいたっけ。
「・・・僕は・・・一体どれくらい・・・?」
「1ヶ月も意識が戻らなくて・・・でも・・・本当に良かったッ・・・!!」
「・・・ごめん。本当にごめん。そして、・・・ありがとう。」
家族というモノを蔑ろにしていた僕が、初めて家族に放った、心からの謝罪と、心からの感謝の言葉だった。
「今、先生呼んでくるね。」
妹は嬉しそうに笑って、医師を呼びに行った。
・・・その時、何かを固く握り締めている事に気が付いた。
そっと手を開いてみると、そこには『友情の証』が静かに光り輝いていた。
END