初恋 1
民宿へ戻り、着替えを終えると、それぞれが砂浜へと降りて行った。
隆が、少し遅れて外へ出ると、もう近くには、誰もいなかった。
隆が“急いで行かなければ”と、走り出そうとすると、女子の民宿の裏に、カラフルな水着が干してあるのが、目に止まった。
隆は足を止め、廻りに誰もいない事を確認すると、何かに取り付かれた様に、水着の方へ、歩き始めた。
そして、又心臓の高鳴りを感じながら、無意識の内に、スージーの水着を探していた。
ひとみの水着の隣に、青い花柄の水着を見つけると、隆はその前に立った。
その時、遠くでホイッスルが鳴った。
砂浜で始まった、ドッチボールの試合開始のホイッスルだった。
隆は我に還った。
“俺は、何をやってるんだ!いつから、こんなにイヤらしい男になったんだ!”
隆は自責の念にかられ、自分の頬を、平手で思い切り叩いた。
そして、頭の中のモヤモヤを吹き飛ばすように走り出した。