「戻りたいって・・・?」
「抱いて・・・、欲しいの。」
淳は、私の言葉を聞き、戸惑った表情で、足元を見詰めて言った。
「そりゃあ、俺だって男だからさ、好きな女にそんな事言われちゃあ、朝まで、話して終わりにしたくないぜ?でもな・・・、香里は、俺にとって、その辺に居る様な女とは違うんだよ・・・。」
「違う・・・?」
「大切な人なんだ・・・。」
私は、勇気を振り絞り、淳に抱きついた。
こんな事を、自分からしたのは、産まれて初めてだった―\r
それは、私の身体が勝手に動き出したのだった。
「大切な人だって・・・、思ってくれてるなら・・・、抱いてよ!!高校二年生の夏、日帰り旅行に行ってたら、私は、あっちゃんとこうなる筈だったんだから!!」
私に、不意に抱き付かれた淳は、言葉を発する事が出来ずに、私を、受け身で支える様に抱き締め返した。
「香里、あのな・・・。お前、何か勘違いしてるぜ。」
淳は、私を一旦、自分から引き離し、ゆっくりと話し始めた。
「勘違い・・・?」
「俺は、香里とそう言う事したいって言うよりもな、お前に、別れてくれって言われた日から、今までの失われた時間を取り戻したいって思ってんだ。」
「でも・・・。」
淳は、私の背中を押し、三階に有る、自分の部屋まで私を連れて行った。
「良いから・・・、外だと近所迷惑だから、家の中に入んなよ。」
淳は、そう言って私を部屋の中に入れた。
淳の部屋は、とても、お洒落で整理整頓されていた。
初めて見る、淳の部屋の中で、私は、キョロキョロしていた。
「あっちゃんの部屋、綺麗だね・・・。男の子の部屋とは思え無いよ・・・。」
「そっかぁ・・・?掃除してくれる子も居ないしさ、輩の部屋なんて、汚いもんだよ・・・。」
「ううん・・・。綺麗だって、ほんとに。」
「香里、何か飲むか?」
淳は、冷蔵庫を開けて、私に背を向けたまま、聞いた。
「ありがとう・・・。今は、良い・・・。」
「そっか。」
淳は、ミネラルウォーターのペットボトルを一本、冷蔵庫から取り出すと、半分位残っていたのを、一気に飲み干した。
気が付くと、私は、四十?位の広いワンルームの端に有る、ベットの前に立って居た。
「あっちゃん・・・。」
「ん・・・?」
「こっちに来て・・・。」
「香里・・・。」
「私の傍に居て欲しいの・・・、お願い。」
淳は、一歩一歩、こちらへ向かって歩いて来た。
数秒後、淳は、私を強い力で抱き締め、ベットに座らせた。