入社は僕より遅かったけれども、大卒の大下さんは美沙子さんよりも年上だった。年頃であった美沙子さんとしては、将来の幹部候補生でもある大下さんを捕まえて、寿退社というのは理想の展開だったのだろう。
すでに退寮していた美沙子さんは、会社近くのアパートで一人暮らしをしていた。当然のように寮生だった大下さんは週末には決まって外泊する。
金曜の夜、残業が終わって寮に戻ると、大下さんの名札が【外出中】の赤色になっているのを見つけては、今頃はあの巨乳を弄んでるんだろうと嫉妬心と共に、卑猥な妄想を繰り広げていたものだ。
しばらくして大下さんは生産管理センターに異動になってしまった。
それ以来、退社後の美沙子さんに関する情報を知る術はなくなってしまったのだけれど、今でも葡萄の巨峰や、プロ野球の巨人でさえ、“巨”の付く言葉を見つけるたびに目で追ってしまうくらいなのだ。