「どんなこと?」
石田は、和枝の気になることが、ある程度、予想出来てはいるものの、聞いてみた。
「それは…夕樹さんと荒木さんの好きだった人…ともに、心打たれた曲が、あるとゆうことです」
(やっぱり…)
「手がかりがないとゆうか…私も知りたいんですよ。…でも夕樹さん言ってました。『たどり着きそうだけど…』って
でも、こうも言ってました。『その先の何かが、歩み寄ってきてくれたら、こんなに嬉しいことはない』って」
「そう…新井さんはどう思っているの?」
「私ですか?私は…同じだと思います」
「でも、夕樹さんのゆう、その先の何かが、もし深い傷として、もう思い出したくないと、拒んだら?」
「同じだと思います…だって、人は誰でも心の傷は、抱えていると思います。でも…でも、いつか乗り越えないと、その先の『希望』や、『未来』は見えてこないと思うから…」
そう言うと、和枝は、我に帰った。
「あ!すいません…がらにもなく熱くなって…」
「いや、そんなことないよ。俺も、心の傷の1つや2つは、あるからさ…ちょっと感動したよ」
「そうですか?それなら嬉しいですよ。乗り越えられそうな心の傷ですか?」
「どうだろう…」
「私、もし…もしもですよ…荒木さんや夕樹さんが、乗り越えようとしている何かが、逆に躊躇してるなら、はっきり言います…『苦しむだけでは、何もはじまらない。閉ざしたままじゃ、何も見えない』って…荒木さんにも言うつもりでしたけど、もう乗り越えようとしてるから…」
「夕樹さんも?」
「はい!…だから、もし…もしもですよ…乗り越えた後に、どんな結末になっても、私は後悔しないですよ」
和枝の決心を聞き、石田自身、勇一や幸子が抱えていた心の傷を、そろそろ解き放す時だと、感じた。
「ありがとう、新井さん…なんか俺も勇気湧いたよ。俺自身が抱えていた、傷とゆうか、わだかまり、何とか、振り払えるように、頑張るよ」
「そんな…でも嬉しいですよ」
「それと…全て終わったら…」
「え?」
「いや、なんでもない。とにかく頑張るよ」
「はい!」
和枝の思いは、それぞれの、傷や、わだかまりから、解き放たれようとしていた…
見えない誰かの、強い思いによって…