僕らのこと?

武津ほずみ  2009-08-27投稿
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「さいか、見に行くでしょ?」
小学校卒業の記念に買ってもらった携帯を、いじりながら絵里が口を開いた。
「夢中になりすぎだから。それ」
「だって、なんて送ろうか。軽めがいいよね」
入学式の時からずっと気になっていた亮太のメアドを手に入れて、もうかれこれ1時間ほど画面と向き合っている。
「そういえばさ、あのこ誰だろうね。川瀬くんとこにいつも来てる男子」
「皆川一馬だよ。1組の」
「何で知ってるの?」
「M小学校じゃ、悪いって評判だったらしいよ。しかもお父さんが代議士だって」
「すごい、そうなんだ…」
もう大して興味がなさそうな絵里を横目に、私は足早に体育館へ向かった。
「待ってよ」
「もう待てないよ。始まっちゃう」
「結局見に行くんじゃん」
「うるさい」
私はそう言って、更に足を進ませた。

あれは入学式から2日目のことだった。
3年生と2年生が毎年恒例で行う歓迎会、「光輝会」。
最後は吹奏楽部が、その壮大な演奏で締め括る。
美しい、素晴らしい、そのどんな言葉でも形容出来ないほど、私は聞き入り鳥肌を立たせた。

決めたあとは早かった。
入部する。
両親は放任主義と言うわけではないが、理解がある。吹奏楽部への入部に、二つ返事でOKを出してくれた。
体育館に入ると、先輩たちが温かく向かえてくれた。そしてトランペットを片手に颯爽と現れた一人の男子に、私は目を奪われた。
「体験入部の沢村さんと林さんだよね。部長の松本悠です。良かったら、もうここに決めちゃってね」
どうしたんだろう。
無防備なこの笑顔に、今まで感じたことのない、身体中に迫る胸の鼓動を、私は抑えることが出来なかった。



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