「何から、話そうか・・・?」
淳は、必死に話題を頭で捻り出そうとしていた。
「何でも。じゃあ・・・、私の話聞いて・・・。」
「うん・・・。」
「あっちゃんには、あの日からの私を、全部知ってて欲しいの・・・。」
私は、淳に話していない、大学時代の彼の話や、中川とのこの一年間の話を、全て話しておきたいと思った。
全部、今まで誰にも話していなかった、私だけの秘密の全てを、淳だけには、知っておいて欲しいと、覚悟を決めた瞬間だった―\r
淳は、一つ、こくりと頷き、私の背中を、何度かゆっくりと擦った。
「先ず、あっちゃんに別れて欲しいって言ってからの事だけどね・・・。男の人が恐くて・・・。あっちゃんに、触れられるのすら、恐かったの・・・。」
「うん・・・。」
「大学の時にね、先輩に付き合って欲しいって、急に告白されたの・・・。皆が、優しいし、格好良いって、憧れてた様な人だったの・・・。私も、変わらなきゃ!って。いつまでも、汚された事、引き擦ってちゃいけない!って思ったから、OKしたの・・・。」
淳は、私の話を一生懸命、聞いてくれた。
「3カ月位は、お茶したり、ご飯食べに行ったりしてただけだったんだけど・・・。3カ月位、経った或る日ね、茅ヶ崎の海岸へデートに行ったの・・・。その時、キスされて・・・。身体が、とんでも無い位に、震えて・・・。逃げちゃいけない!って、彼に悟られ無い様に、手を固く握ってね・・・。帰りに、突然、ホテルに行く事になって・・・。」
「そいつと出来たのか?」
「ううん・・・。部屋の前まで行ったら、脚が、鉛みたいに重くなって・・・。動かなくなったの。で、その時は、彼も優しく、良いよ。って言ってくれたんだけどね・・・。」
「駄目になったんだな?」
「うん・・・。その日以来、彼とは疎遠になって・・・。暫くして、学校で、彼が友達と話してるのを、たまたま聞いちゃって・・・。」
「そいつ、何だって?」
「重いって、私。3カ月も、何にもさせてくれないから、何か有っても、後で、ストーカーとかされそうじゃん?って。何も、させてくれないのに、デートしたって、お金、勿体無いって・・・。」
「最低だな、そいつら。」
「男の人って、皆、そうじゃ無いの?相手と、身体の関係持ちたいって思ってるんでしょ?」
「本当に、相手の事を大事に思ってたら、身体の関係なんて無くても、一緒に居たいと思うし、好きなんだよ?香里。」
淳は、思い出して、涙が出そうな私の顔を覗き込み、優しい笑顔を浮かべ、そう諭した。