「 」

 2009-08-27投稿
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考えれば簡単だった、着替え中を覗かれたのにもかかわらず、大声を彼女は発しなかった。


俺と彼女は向き合っている、しかし俺の姿は見えていないだろう。


―――目が見えないのだから。



見た感じ、薄緑のパジャマ姿の幽霊。

肩に掛かっている黒髪、細身の体。

目は見えないが美人に分類されるだろう。





「………あの〜、すみません」

幽霊が話しかけてきた。
間違った、篠原らしき人物が話しかけている。


「何だかさっき『スミマセン』って聞こえてんですけど、どうかしたんですか?」





何か話しかけている…………えっ、俺!?



「えっと…その、」

シドロモドロ、見えていないのにずっとこちらを見ている気がする。

「ごめんなさい!!」

「えっ?」

「あの着替え覗いちゃって……いや!決してワザとじゃなくて」

「……………」


応えは返って来ない、きっと睨んでいるんだろう。












「………………………プッ、アハハハハハハ」





「えっ?」



笑っている?

何で?


「アハハハハハハ、はぁはぁ……お腹痛い」


「……………あの〜」


「ああ、ごめんなさい。貴方が随分と真剣なものだったから、本気で笑っちゃった」


意味不明。

「着替えを見たぐらいでそんなに謝らなくても、減るもんじゃあるまいし…」

理解不可能。

「ワザとじゃないんでしょ?だったらいいじゃない」






貴女はどこの美少女ゲームのヒロインですか?


いやいや、本当にこんな人が居るなんて……






思考は中断させられた。


「ぐッ!」

吐き気が襲いかかる。


口を手で押さえて洗面台に向かう。

まともな食事を取っていない胃から吐き出せるものはなく、胃液か体液か分からないのが喉から排泄される。


それと同時に脇腹に痛みが……




「大丈夫ですか?」




えっ?



背中を何かが撫でている。

「お医者さん呼びましょうか?」

俺に何かが話しかけてくる。






吐き気がする。




病気の所為だ。






盲腸炎の所為じゃない。





触るな、


触るな、触るな、触るな




触るな、触るな、触るな、触るな、触るな、触るな、触るな、触るな、触るな、触るな、触るな。



吐き気がするから触るな!!



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