そもそも俺は、この会社のシステム開発課の課長をしていた。
中小企業であり、そこそこ名の通った、食品製造会社であったが、
人を捨駒の様にこき使うなどのマイナスイメージが、いつも先行して流れているといった具合だから、
経営者は、益々変わり者だと言う事が想像出来るだろう。
この変わり者の社長は、事あるごとに人事異動をさせるのだが、
その頻度の多さから、単なる社長の気紛れだと言うのが、もっぱらの噂だった。
かくいう俺も、この20年間の間に、3度異動させられた。
最初は営業部。
2度目は研究開発課。
そして3度目に、現場作業責任者。
いずれの異動理由も、明確にされる事は無かったが、
常に同僚達が、俺の陰口をたたいている事には気付いていた。
――どこの部署へ異動になっても使えねーヤツ――
はらわたが煮えくり返るとは、この事を言うのだろうか。
俺は、この言葉を耳にする度、
腹の奥底から、熱いものがこみ上げて来る感覚に襲われていた。