「…………………………」
白い光景が見える。
微かにクリーム色が入っていて、蛍光灯の灯りが眩しい。
俺はベッドで寝ていた。
吐き気はしなかったが、体がダルい。
何でこうなっているのだろうか?
「…………ああ、そうだ」
俺は医者と2人の看護士にベッドに運ばれたんだ。
腕に違和感があると思ったら、点滴されていた。
「ベンゾジアゼピン」
なんのこっちゃ?
意味不明の薬品名、吐き気止めのだろうか。
半分位は無くなっていた。
さて、
どうしたもんか、この状況。
改めて考えると、これは俺にとって死活問題だ。
女は苦手だが、だからと言って他人をあからさまに無視する事は出来ない。
なら、医者に相談するか?
いや、それだと病気でもないのに余計に入院を長引かせる。
それに、姉貴の事はバレたくない。
よし、まずは出来る限り会話をし難い状況を作り出そう。
テレビは今後イヤホンを使って聴く、これならなかなか話しかけなれないだろう。
後は、ベッドの頭の方を高くして常に寝ていられる状態にする。
そして、反対側を向いていれば完璧だ!!
あっ、そうだ、カーテンを閉めておけば完全になる。
そう思ってカーテンを閉めようとした。
視界に彼女の姿は居なかった。
「………」
別に深くは考えなかった、目の怪我、いや病気なのだろうか、そういうのは最初に精神を安定させる事が大切だからだ。
目が見えないというのは俺が考えている以上に大変なんだろうな。
何だか無性に眠い。
少し寝るか………
ふと目が覚めた。
今度はかなり体が軽い、熟睡していたみたいだ、いつの間にか点滴が取られていた。
さっきはずっと寝ていると言ったが、寝てばかりだと体に悪い。
テレビは何が面白いか分からないサスペンスドラマの再放送がやっていた。
「少しは動くか…」
ゆっくりとベッドから抜け出し、サンダルを履いて部屋を出ようと立った。
相変わらず隣のベッドは空っぽだった。